赤ワインの澱(おり)

先日飲んだ赤ワインのお話。*1
さすがに10年もののポムロールのお隣ワイン*2だと澱が生じていました。


この澱は、ワインの成分中の色素やタンニンといったポリフェノールや蛋白が熟成中に重合・結合して不溶化したものです。
成分の濃厚なワインで多く見られ、また熟成年数と共にその量が増えるものです。
ヴィンテージものと言われるような25〜30年の熟成したお年頃のワインや30年以上の眠りについている古酒などといわれるものをそっと扱わないといけないのにはこの”澱”の存在もあります。


ワインの瓶の底を見れば良く分かりますが、特に澱が多いと思われる長期熟成型の赤のフルボディの瓶の底はとても窪んでいて、その澱を容易にためやすいようになっています。
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瓶の底のふちあたりに黒っぽい塊がみえるのが澱です。


このようにボルドーでしたらかなりおおきな結晶となり、万が一口にはいってしまえば口当たりも悪いものです。
せっかくの熟成ワインを楽しくおいしく味わうにはこの”澱”を取り除いてやったほうがよいのです。




ではどうするか?


1.飲む前に澱をボトルの底に沈ませる
あたりまえですが、飲む前に澱をボトルの底に沈ませることです。
澱の出来具合にもよりますが、ボルドーのように結晶が大きくなる傾向のものでも最低3日以上はボトルを立てるか底を下にして斜めにした状態を保ったほうがよいそうです。
ブルゴーニュワインでしたらこの澱の粒がとても小さいため長期熟成のものほど1ヶ月くらいはおいておいたほうがよいそうです。
もちろんその間の温度管理も大切です。*4
よって振動の小さな「ベルチェ方式」のワインセラーが好まれるのも理由があります。


2.デキャンタージュ
そして澱が沈んだあと、そっと抜栓をしてデキャンタージュします。
神の雫』の神崎雫のまるでパフォーマンスのような美しいデキャンタのように空気をいれてワインの味を膨らませるのもデキャンタージュではありますが、この場合は澱をとりのぞく・上澄みだけをデキャンタに注ぐという意味でもあります。*5





勉強も兼ねて3日目の酸化モノも底のほうまで試飲しました。
やはり飲み頃を逃すとおいしくないですし、澱の口当たりも悪いしおいしくないものですw



これが正真正銘のポムロールのペトリュス*6でヴィンテージの27年モノだとしたらもっと大事に扱って欲しいなぁ・・・と某ドラマを見て思ったりしました。
ワイン飲みは薀蓄垂れたりでウザがられそうですが、大切なものには大切なものの扱いというのがあるのです。





もっと飲みたいなぁ。こういうのw




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*1:*http://d.hatena.ne.jp/love_wine/20090408 シャトー・ラ・ヴァリエール

*2:*ラランド・ド・ポムロール地区

*3:*底の窪みが浅いワインは若さを楽しむ傾向のワインだと思っていいと思います。

*4:*温度が上昇するとせっかく結晶化して底に沈んだ澱がふたたびワイン中に溶け込んでしまうからです。

*5:*このあたりも『神の雫』10巻のPETRUSのあたりできちんと描かれています。ご参考に。

*6:*Château Petrus